2025年11月7日
ARCHIVIO J.M. Ribot : COAT FULLY LINED
“The Hypocrisy of Abundance(豊かさの偽善)” をテーマに、現代社会における過剰な消費や、繰り返される幻想的な欲望の裏に潜む脆さを静かに見つめ直したARCHIVIO J.M.Ribot 2025AWコレクション。
デザイナーKarim Fares氏は、素材の本質や職人の手仕事から生まれる価値を通して、真の豊かさとは何かを問いかけます。
今回ご紹介するのは、衣服の構造や素材選び、細部のディテールにまでシーズンテーマの思想が反映された、ヴァージンウールコットン生地によるオーバーコート。
イレギュラーなジャカード織が生む奥行きと陰影が美しいブラックのコートは、光の角度によって表情を変え、モノトーンの中に深みをもたらします。裏地には、今季のワーカーシャツにも用いられたヴィンテージシルクを贅沢に使用。ルネサンス絵画を思わせる淡い色調の中に、天使や白鳥、そして静かに佇む女性のモチーフが描かれ、静謐な黒と呼応しながら内側に詩情を宿します。
一方、織りで表現されたストライプがさりげなく浮かび上がるクリームのコートは、柔らかな光と温もりが溶け合う穏やかな佇まい。裏地には、バーミリオン、パープル、ペールピンクなどが重なり合うボタニカルフラワープリントのコットンを使用し、寒い季節の装いに内側から生命の息吹をもたらします。
外側の端正な佇まいと、内側に秘められた豊かさ。その対比の中に、作り手の思想と職人技による構築美が静かに息づいています。
ARCHIVIO J.M.Ribotの作品が放つ、静謐な美しさをぜひご覧ください。

